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雨は鬱陶しいけど、好きとか嫌いとか思うにも足らないものだと思う。
勝手に降ればいいし止めばいい、まるで自分とは違う次元の話としか思えなかった。
でも雪は嫌いだと思う、雪の日は自転車がこぎにくいから。 「だーもー流川てめえ無視か!それとも本気で耳悪いんじゃねえ!?」 医者行け医者あ!! 「、先輩鍵あいてたんすか。」 「鍵あいてたんすかじゃねえよばか!こっちはチャイム連打しまくったっつーの!」 「気づきませんでした。」 「病気だ病気!っくしゅん!ああもうありえねえ!」 家出たときは晴れてたくせになんでいきなり降ってきやがんだよこのくそ雨! ずぶ濡れで走ってきてチャイム連打して無視られて風邪引くだろーが! 「すいませんでした。」 「・・・風・呂!」 「ずぶ濡れっすね。」 「ああもう中までべちゃべちゃだよ。」 (えろい) とりあえずタオルを渡して風呂の準備もして案内して俺の下着はくんすかと言ったら殴られて (でもはくんだろ)、最低のクリスマスだと呟いて彼はすりガラスの向こう側へ消えて行った。 今日はクリスマスだったと思った。(雨のなかわざわざ来てくれたんだし なにか気のきいたものでもあげたかったと今更。) 外はもうどしゃ降りだった。叩きつける雨がだじだじとうるさくて、いらいらした。 不快指数100%のクリスマスに小さく舌打ちをして、早く止めばいいのにと思ったけど 当分止みそうにないしうんざりした。 「サンキューな、これ。」 頬を赤らめて出てきた先輩の機嫌はよくてほっとした。ふわりと笑った顔に 自分がつられているのに気付いてふいに幸せだなんて月並みで ばかくさい言葉が浮かんだことに雨よりもうんざりした。 でも自分の大きめのティーシャツを着ていつもより幼く見える彼が狂うほど愛しく思えて、 所詮こんなもんだと思った。こんなもの。自分はこの人の前では裸みたいなものだと、 ばかなことしか思いつかないし、ただ先輩も俺と同じ波長でゆっくりと静かに、けど 幸せを感じていればいいなと思うだけ。愛しいという事。愛しているという感覚に ひたすら溺れる。共鳴も証明もどっちもほしい。わがままな欲だけがただひたすらに。 (溢れて零れるか否かの瀬戸際で常にぐらぐら、 なけなしの理性で食い止めるのに必死な欲たちがそろそろ限界だと喚いて仕方ない。) 「しっかしよく降るなー。まじありえねえ。」 せめてこれが雪だったらなー。ホワイトクリスマスだったのに。 「雪すきなんすか。」 「嫌いなのかよ?」 「はい。」 「マジ?俺雪嫌いな奴初めてみたって。」 「鬱陶しいじゃないっすか。滑って。」 「滑んの!?流川楓が道路で滑んの!?ぷっあははナイス流川ー!!どんくせー! なんかもうださい通り越してかわいい!かわいいよグッジョブ流川!!」 (かわいいだとか初めて言われたとどきりとする。)(それが嬉しいかどうかは別として。) (そしてゆっくり、これさえ幸せ。) 「!」 「へへっ。俺なんかすっげえお前に親近感沸いたんだけど。今更ながら!」 「・・・そっすか。」 (融けそうだ解けそうだ。風呂上りの熱い唇に熔けてしまいそうだ。) 鋭い光のあと鈍い音が響く、裂くような雷鳴にぞくぞくする。 「・・・雷まで鳴ってんじゃん。すげー天気だな今日。最悪。 実はさー。お前にクリスマスプレゼントとかやりたかったんだけどさ、なんか思いつかなくて。 だから今日一緒に選ぼうと思ってたのにこの雨だろ。」 「やんなるな。」 くしゃっと笑った顔に、(ありえない程大きな衝動、雷のように鋭く鈍い、) (もう、こぼれる) 「今の、落ちましたね。」 「ん?ああ、落ちたかもな。音すげかったし。」 「先輩雨は嫌いっすか。」 「好きじゃねえな。」 「そっすか。」 「お前は?」 もう一度窓の外で一瞬光る、 (そしてこれも一瞬、噛み付くようなキスのあと、ゆっくりと離れて) 「好きじゃねえっすよ。」 もう一度、 落雷。 (ズガン) - クリスマス無関係フォーリンラブ流川 (06.12.25) ← |