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祭りの後の静けさ。寂しいけど楽しげな余韻の残る不思議な時間。 あのままつけっぱなしだったクーラーとテレビ以外、この部屋には時計の針の音が するだけだった。 「おまえまだ帰んねーの?」 「迷惑っすか?」 「や、今日家誰もいねーし別にいーんだけどさ」 テーブルにはアルコール類の空き缶がごろごろしていた。 あやちゃんと晴子ちゃんが帰った後、当然これを始末する人間もいなくなり、 ばかが4人集まれば酒も進むわけで、それはテーブルを埋め尽くす量となり、 とうとう潰れすぎてどうしようもない 花道をじゃんけんで負けた三井サンが連れて帰った。 今この家にいるのは俺と流川だけ。 別にひとりでいるのは少しだけ寂しいから居てくれたほうが嬉しいっちゃあ嬉しいけど、 何をするわけでもなく隣に居るのはなんだか少し気がひける。 誕生日にひとりは可哀相だと言われている気がして、あの流川に同情されているような 気がしていやだった。 寂しさは眠ってしまえば気にならない程度だから、帰ってくれても構わないのに。 けどそれを言葉にすると余計嘘っぽいし失礼な気もするから言えないままで、もう こちこち五月蝿い針は12時をさそうしていた。 「ほんとは、」 「ん?」 「一番に言いたかったんす、お祝い」 まあ言ったことにはかわりないけど。 流川のことばに唖然とする。 流川はそんなこといちいち祝ったりなんかするイメージがなかったし、 なにより俺の誕生日なんて知らないと思っていたから。 だから俺の想像のクラッカーが鳴り響く体育館でも、あいつだけは真顔で 突っ立っているだけだった。 それなのに。 「けど、みんなが一緒に言おうって、それの方が宮城は絶対喜ぶって言うから」 流川のきれいな眉が少しだけ苦そうにひそめられた。 「1週間も前から計画してたのに、みんな好き勝手言っていっこも進まなくて、 とうとう今日になって」 「ああ、だいたい想像つく」 ほんのり酔いが醒めてきた。もうすぐ今日も終わる。 期待して、裏切られて、少しだけ悲しくなって、腹が立って、とびっきりうれしくなった今日が、 あと数分で終わる。 「先輩、これ」 「え、プレゼントならもらったじゃねーか」 「あれは部のみんなから。個人のプレゼントも無しだって決まってんだけど、 あげたかったから無視した」 内緒にしといてください。 そう言って渡されたのはまさかとは思うが婚約指輪のひとつでもでてきそうなサイズの 小さな箱。きれいにラッピングされていて、あけるのが勿体無い。 「あけていい?」 「や、俺が帰ってからにしてください」 「よし、あけるぞー」 「ちょ、先輩っ」 珍しく焦った流川に笑う。だめだ、おかしい。 「じょーだんだよ、じょーだんっ」 「…」 「そう怒んなって。 …ありがとうな」 うれしい。素直にそう思った。少し婚約指輪の疑惑が拭い切れなくて 複雑な気持ちもあるけれど、流川がプレゼントを用意してくれただなんて、 意外過ぎてうれしすぎる。 「あー、今日ももう終わるな」 2つの針が12に重なるか重ならないか。あと数秒で今日が終わる。 「先輩、誕生日おめでとうございます」 かちり、と今日が終わった。 「先輩、誕生日から1日後おめでとうございます」 「…っはあ?」 「先輩に一番におめでとうが言いたくて、まあ結局言えたけどあんな形だったし、 だから一日の一番最後は俺が言いたくて、」 「そんで次の一番は、ちゃんと俺が言いたかったんす。 長い間お邪魔しました」 ぺこりと少しだけ頭を下げて流川が立ち上がるとソファが少し持ち上がった。 何言ってんだとあっけにとられていると玄関では扉の閉まった音。 「誕生日から一日後おめでとうって」 ばかじゃねえのかあいつ。急におかしくなって笑い転げていると涙が出てきた。 まだ酔いが醒めきらないらしい、おかしさとうれしさでぼろぼろ溢れた。 なんなんだあいつは。なんなんだ。 泣きながらきれいに飾られた箱をあけるときらきら光る小さなピアスがひとつ、 よかった指輪じゃないと電気にかざして眩しいくらいに光るそれをみてまた笑った。 (ある31日と1日) - でも来年は指輪だと思います^^マリーミー^^^ リョータほんとにおめでとう! (07.08.14) ← |