アメリカに行ったあいつと、それを見送ったこいつ、更にそれを ただ傍観していた俺。
別になにが変わるわけでもなく、ただいつも通りの毎日。 別になにを変えられるわけでもなく、ただ、またいつも通りの毎日。



「あんた友達つくんなよ、毎晩のように俺と飯食ってないでさ」
いつも通りこの元後輩はかわい気が無くそう言い放った。 貧乏学生に奢らせている分際でどんぶりとハンバーグを食うとはどういう了見だ。

「いるっつの、友達くらい」
「じゃあそいつらと食いなよ」
「そんな気分じゃねーの」
「あっそ」





流川とこいつが特別なのは知ってた。誰に聞いたとかじゃなくて、見ていて丸判りだったから。 そしてもうあいつとはなんでもないことも、知ってる。見ていて、丸判りだったから。
懐かしい顔ぶれが揃っていた見送りの日、あいつらは一度も目を合わすことなく、 言葉だけで別れを告げた。握手も抱擁も、ましてやキスなんて。 からからの声で「がんばれよ」と言い、「うす」と無愛想な答えだけが冷たく響いた。
壊れるんじゃねえかと思った。どっちも、折れてしまいそうに弱々しかった。
だからどうしても放っておけなかった。目を離したら飯もろくに食わねえかも知れねえと 思って誘ったのがきっかけで、今もこうしてだらだらと誘いつづけているだけ。 とりあえず俺の心配は思いっきり無駄に終わった。むしろこいつごつくなってねえか。



「おいデブ」
「デブじゃねーよ筋肉だっつの」
「んな練習きついのかよ?」
「練習っつーか自主トレ?」




こいつは無意識に追いかけてる。きっと無意識に、俺らとは違うところへ行ったあいつを、 追いかけている。それがどうしても俺にはただ一人の選手として見ているとは思えない。 まだ、こいつは。当たり前だろうけど、まだこいつは。



「ごちそーさま」
「見事な食いっぷりだな」
「まーね」



誰にも言えない思いをひとり抱えて、明日も朝から晩までひたすらバスケに打ち込むんだろうなと 考えると、苦しくて辛くてとても言えない。
ことばにして文にするのは簡単でも、音にすることはとてもできない。ただこうやって、 一緒に飯を食うことしか、俺には。
けどいつか、
なんて思いたくもない。










(どうしようもない、だけど)
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三井すきです
(07.12.27)